1981年、日本発唯一の国際ペイメントブランドとして、本格的な海外展開をスタートさせたJCB。
以来、世界中の大手金融機関だけでなくローカル決済ネットワークや他の国際カードブランドと提携して、
さまざまな決済シーンで安心して利用できる加盟店ネットワークの構築・拡大を図ってきた。
2010年半ば以降、海外カード会員数も大幅に増加。現在、海外カード会員数は約3,500万人(2023年3月末)に到達。
決済のデジタル化、モバイル化が急速に進むなかで、今後、JCBはどのような海外戦略を描いているのか、
海外を舞台にJCB社員はどのような役割を担っているのか、海外事業を統括する金子国際本部長に話を聞いた。

金子 佳喜

金子 佳喜Yoshiki Kaneko

常務執行役員 国際本部長

海外戦略は、次なるステージへ。
アジア市場をてこに世界へ挑む。

qまずは、現在のJCBが描いている海外戦略の方針について教えてください。

JCBは、1981年、日本発唯一の国際ペイメントブランドとして本格的な海外展開をスタートさせました。当時は、国内カード会員の方が旅行やビジネスで海外渡航する際に、ホテルやショッピングなどでJCBカードを利用できる環境を整えることが主なミッションでした。さらに、海外旅行をサポートするJCB会員専用の海外サービス窓口「JCBプラザ」を世界各所に展開、「JCBプラザ ラウンジ」を世界主要都市に設置するなど、会員向けのブランドサービスの充実にも努めました。こうした取り組みを通じて、JCBの価値を高め、JCBカードが利用可能な加盟店ネットワークの構築・拡大を行ってきました。

金子 佳喜

海外展開の第一歩が国内カード会員に向けた海外でのサービス拡充であったとすれば、現在は次なるステージとして、海外カード会員の拡大期に移行しています。実際、海外の会員数は年々増加し、なかでもアジア地域や新興国の著しい経済成長を背景に、中国、韓国、台湾などに加え、インドネシア、タイ、ベトナム、フィリピンなどASEAN諸国を中心に提携先を増やすことで、海外カード会員や加盟店ネットワークの拡大に注力しています。こうしたアジア市場での会員基盤強化をてことして、全世界での加盟店ネットワークの拡大を目指しています。
さらなる成長市場として、インド・サウジアラビアなどでも活動を加速し、2021年にはインドでNPとのアライアンスによるカード発行を本格的に開始し、サウジアラビアでは首都リヤドにJCBのオフィスを設置するなど、加盟店を開拓しています。また、規模の拡大だけではなく、「質」においても、日本発の国際カードブランドとしての独自性を活かしたサービス等、他の国際カードブランドとの差別化を図っています。近年、決済の世界で起きているテクノロジーの進化もふまえ、日本ブランドとしてのJCBならではの品質の高さを強みに、国や地域にあわせたサービスを展開していきます。

海外カード会員数 2023年9月末時点
海外カード会員数の図

また、コロナ禍において特に加速したEコマース取引等の非対面取引においても、スピード感をもってサービスの開発・拡大に努めています。非対面での利用が浸透した昨今、グローバル展開をする大手アクワイアラとの協業により、デジタルプラットフォーマーやEコマース企業の加盟化を進めるとともに、多様化する決済シーンを背景とした新領域での協業等、さまざまに取り組んでいます。

日本発ブランドの信頼感を武器に、
質の高いサービスの提供で差別化を図る。

qアジアを中心とした海外戦略のなかで、JCBの強みは何でしょうか?

海外事業展開における主要戦略のひとつとして、日本関連サービスの充実による差別化を図り、顧客への提供価値の向上を目指すというものがあります。具体的には「1. カード発行国・地域での商品開発」、「2. 発行国・地域での日本コンテンツ体験促進」、そして「3. 訪日旅行時のUnique Experienceの提供」です。これは当社が日本発唯一の国際ペイメントブランドであるからこそ実現可能な戦略だと考えています。

金子 佳喜

qその強みをどのように活かそうと考えていますか?

日本発ブランドとして徹底的に「日本コンテンツ」を活用し、当該国・地域・日本の「三位一体」の戦略を展開しています。例えば、まず「1. カード発行国・地域での商品開発」について、台湾では2023年7月、熊本県PRマスコット「くまモン」を券面に使用したカードを発行しました。これは、近年の熊本での台湾企業の半導体工場設置等、台湾との経済面を含めた人材交流の活発化を背景に、当社がハブとなり国内外のステークホルダーと協業して実現した事例です。
次に「2. 発行国・地域での日本コンテンツ体験促進」では、アジア各国でも人気の高い日系加盟店(物販、飲食等)での割引・優待を充実させ、各国にいながら「日本」に触れる機会を拡大し、その価値を実感いただくことを目指しています。
最後に、「3. 訪日旅行時のUnique Experienceの提供」です。2022年秋以降、コロナ禍が沈静化し、海外渡航の再開により日本インバウンドは急速な回復を示すなか、当社ではタビマエ(渡航前)からタビナカ(旅行中)まで一貫したサービスを提供しています。タビマエでは、ブランドポータルサイトJCB Special Offersにて世界中のJCB加盟店での優待情報に加え、在日外国人の方から見た日本の魅力情報を「Japan Tips」として提供しています。タビナカでは「便利」「使える」「お得」「発見」といった価値提供を目指し、空港ラウンジへのアクセスや、国内の金融機関・大手事業会社等との協働化、海外会員に人気のある業種・加盟店の優待など、日本コンテンツをテーマとした施策を拡大しています。一例として、2023年秋には北海道にスポットを当てた海外会員向けキャンペーンを実施しました。
これらの取り組み以外にも、ポップカルチャー関連や医療ツーリズム等、海外会員の多様化するニーズに対応すべく続々と開発しています。今後も、日本発唯一の国際ペイメントブランドとして、豊かな日本コンテンツを活かしたJCBならではのサービスを充実させ、日本を訪れる方へのUnique Experienceの提供に挑戦し続けます。

金子 佳喜

各国の金融機関を交渉先に、
ダイナミックなビジネスに挑戦。

q海外における具体的なビジネスの進め方を教えてください。

JCBの海外展開におけるミッションは、カード会員の拡大と加盟店ネットワークの拡充です。そして、このミッションを達成するためのビジネスモデルが「ライセンスモデル」と「アライアンスモデル」です。
「ライセンスモデル」は、海外の金融機関等とライセンス契約を締結し、JCBカードの発行、加盟店の拡充を図るものです。海外駐在員や海外拠点の現地スタッフ、あるいは国際本部の営業部隊が一丸となって、国内で培ってきたカード発行や加盟店ビジネスの経験とノウハウを活かし、金融機関との提携交渉にあたります。さまざまな商品企画や戦略提案を行うことで、ライセンス契約の成約に結びつけていきます。東アジア、ASEAN、欧州等ではこのモデルで展開しています。
もう一方の「アライアンスモデル」は、インドが代表例となります。その国のペイメントネットワーク保有者とJCBが提携するモデルです。インドでは、「RuPay(ルペイ)」というNPCI(インド決済公社)が事業者の国内ペイメントブランドとして存在します。この国内ブランドとJCBが提携することで、インド国内では「RuPay」の、国外では「JCB」のネットワークが利用される仕組みです。JCBにとっては、その国の加盟店網を一気に拡充できることが最大のメリットです。このモデルの場合、その国の中央銀行傘下で地場金融機関を束ねている大きなネットワーク保有者が提携の交渉先となります。(詳しくはこちら
また、相互補完の観点から他ブランドとのパートナーシップ体制を構築し、加盟店ネットワークの拡充を図っています。具体的には、米国のAmerican Express社(以下、AMEX社)、Discover Financial Services社(以下、DFS社)とは、JCBが日本での加盟店開放を支援するのに対し、DFS社には米国、AMEX社はカナダ、オーストラリア、ニュージーランドでの加盟店開放を支援いただいており、国内外のJCB会員の利便性向上に努めています。
国や地域ごとに、ライセンスモデルやアライアンスモデル、あるいはこの2つのモデルを組みあわせて取り組んでいくのが、JCBの海外ビジネスの特徴でもあります。
また、もうひとつ言及したいことは、契約は入り口であり、そこからの戦略提案がより重要ということです。国や地域ごとに異なる状況のなか、定量的なデータ分析もふまえ、商品開発、販促戦略にとどまらず、大きな経営課題のひとつであるリスクマネジメントの観点からも、提携先と一緒に戦略・解決策を考え、提案するノウハウがあることもJCBの強みだと考えています。この付加価値は無形の差別化になっていると自負しています。

q海外展開を進めるにあたり、どのような資質、能力、経験をもった人材を求めていますか?

現地の金融機関や加盟店との交渉、現地スタッフとのコミュニケーションなど、語学力があるに越したことはありませんが、決して必須条件ではありません。それ以上に、基本姿勢として、世の中のトレンド・変化へつねに好奇心と、現状把握、課題解決に向けた情熱を持つことが大切です。また、ビジネス面では、カードビジネスに精通し、デジタルの進化に関心を持つことが大切です。交渉窓口となる担当者も、カードやペイメントビジネスのプロフェッショナルです。その点では、国内カード業務や加盟店業務を経験し経験・知識を養うことは、グローバルビジネスを進めるうえで重要になります。また、「海外トレーニー制度」という、若いうちから海外経験ができる環境も整え、海外で活躍できる人材育成にも注力しています。
いざ海外駐在となると、当然上司のサポートはありますが、JCBの代表として先方との交渉の席に座り、折衝します。海外マーケットの拡大や提供するサービスの質向上というダイナミックなミッションに対し、若手からチャレンジしてもらいたいと考えています。
我々のビジネスは世界をフィールドとし、各国では文化も価値観も多種多様です。また、近年はテクノロジーの進化により、世界の決済市場は急速な変化の真っ只中です。そんな多様性や環境変化を「面白い!」と思えるか、その好奇心とチャレンジ精神が何よりも大切です。未知の世界を知ることに貪欲で、つねに新しいことに前向きに挑戦できる人、これからのJCBはそんな人が大いに活躍できる舞台だと思います。

JCBの海外拠点

Asia/Pacific
北京 / 上海 / 香港 / 台北 / ソウル / シンガポール / マニラ / クアラルンプール / バンコク / ヤンゴン / ハノイ / ホーチミン / ジャカルタ / スラバヤ / シドニー / ムンバイ
Americas
ロサンゼルス / シリコンバレー / ホノルル / グアム
Europe
ロンドン / フランクフルト / マドリード / ウィーン / ローマ / パリ
Russia & CIS
モスクワ
Middle East
リヤド / ドバイ

2023年6月